2013年10月27日

書評:夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』光文社新書

面白すぎる一冊。そして革命的な一冊になりうる可能性を秘めている。

私はアトピーを食事療法で治した経験がある。その経験から小麦や米の摂取は体に害悪であることを身をもって実感してきた。しかし、それは急激な品種改良によるたんぱく質の変化が原因であって、決して糖質の過剰摂取に原因があるわけではない。糖質制限で体が楽になったという体感報告は、糖質制限による効果というより、品種改良によって毒と化したお米や小麦を摂取しなくなったことによるものではないだろうか。そう疑っていた。

そんな中で、今回は湿潤治療で有名な夏井先生が糖質制限を肯定し実践されているという。夏井先生の湿潤療法には驚かされた経験がある。擦り傷には消毒は不要で、水洗いだけで足り、傷口から出てくる体液が乾かないようにするだけで十分というのだ。しかも痛みを抑えながら早期に改善に向かう。アトピーで全身擦り傷だらけといって過言でなかった私には、経験から納得いくものばかりだった。アトピーによる傷口も、全身に及んでいるので消毒などいちいちしていられない。汚い手であちこち掻きまくっているのだから、傷ぐちは雑菌だらけのはずである。消毒必須論からすれば、全身膿まくるはずだ。しかし一切膿んだことはなかった。しかも乾燥を防ぐという方法はアトピーによる皮膚炎症を抑えるのにも一定程度効果的だった。治してもまた痒くなり掻きむしってしまうのだけれど…。でも擦り傷には湿潤療法!というのは間違いなく正しい選択だと身をもって感じた。

夏井先生の理論は、ご専門の形成外科医としての知識だけでなく、思想史つまり人類の知の歴史を俯瞰した上で、現代の医学理論のパラダイムを位置づけ、それを批判検討した結果として生まれたもので、とても説得力がある。そんな夏井先生が今度は糖質制限を肯定し実践しているというのだから拝読せずにはいられない。

読んで驚いた。炭水化物そのものをほぼ毒物扱いである。まあ毒物というのは言い過ぎで、人体に不要な奢侈品であり、酒やタバコと同じ扱いだ。摂取しなくても生存には何ら問題ないし、摂取過多は健康を害する。そして一度炭水化物の味を覚えてしまうと、なかなかやめられない中毒性がある点でも酒やタバコと同じだ。そしてその中毒性が文明を切り開き、集住生活(定住ではない)をもたらし、法や政治や戦争を生み出したというのだから、ぶったまげる。本書によれば炭水化物という奢侈品に取りつかれたことによって、過重労働が生まれた。純粋に生存のための農耕ならば、大豆を栽培にした方が、手間もかからず楽なのに、人類は米や小麦を選択した。その味に取りつかれたからだ。米や小麦に基づく過重労働が労働の神聖視をもたらし、その正義のもとで財産制度も出来上がっている。もし先生の理論が正しいのだとしたら、今後100年で人類は大革命を経験することになる。農耕革命、産業革命に続く、脱炭水化物革命だ。IT革命なんてはっきり言って小事にすぎない。近代思想の袋小路を脱する契機が脱炭水化物にあるかもしれないのだ。わくわくせずにはいられまい。

お米や小麦は品種改良によって消化が困難なアレルギー食材に変わってしまっている。それは実感として間違いないと思う。それどころか、そもそもお米や小麦は人類が毎日摂取すべき食材ではなく、麻薬性のある奢侈品なのかもしれない。炭水化物の生産は大量の淡水が必須で、アメリカの小麦生産を支える地下水資源はあと数十年で枯渇する。どう考えても人類は今の食習慣を維持すべきではない。いや維持できない。炭水化物は生存に不要ならば、炭水化物に固執する人間は明らかに贅沢だし、環境破壊や差別的な社会制度の元凶だとしたら、炭水化物を三大栄養素として疑わない無思考は「悪」そのものだろう。糖質制限食、脱炭水化物食は、単なるダイエット法の一ブームではすまない。人類を全く新しいフェーズに移行する可能性を秘めた試みなのだ。

ただ受け入れられない部分もある。本書で夏井先生は油物に関して何を摂取しても問題ないと主張されている。だが、これは明らかに間違っている。リノール酸の摂取過多は人体を炎症過剰体質にして確実に健康を害する。糖質制限するにしても、油脂の摂取(量ではなく質)には十分注意しないと痛い目にあうだろう。揚げ物や炒め物は極力排除して、調理は煮る、焼く、蒸すに限定し、青魚を積極的に摂取するべきだ。糖質制限の旗振り役である江部康二先生もリノール酸の摂取過多には警鐘を鳴らしている。この点は夏井先生に再考していただきたい問題である。






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posted by あれるげん at 13:13 | Comment(4) | TrackBack(0) | 糖質制限 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月26日

祝!日本公開!

映画「ハンナ・アーレント」
http://www.cetera.co.jp/h_arendt/




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posted by あれるげん at 16:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | アレント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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