2014年03月03日

貿易収支を理解する架空話

前回の記事(http://judgethinkwill.seesaa.net/article/390259558.html)の補完として、貿易収支を考えるための架空話を作ってみた。


架空話

とある世界に日本皇国とアメリカ帝国という二つの国があった。両国の通貨はともにゴールド(G)である。この両国は非常に仲が悪く国交は断絶している。貿易は全くない。だが、好奇心が旺盛で密貿易を試みようとする変人が両国に一人づつ存在した。日本皇国には和服の仕立屋の小泉君がいて、アメリカ帝国には洋服の仕立屋のブッシュ君がいた。両君とも自分が仕立てた服を相手に売りたいと思い、商品を製作し密かに接触した。

小泉君の手持ちの資金は100Gだった。それをすべてはたいて和服を一着仕立てた。ブッシュ君の手持ちの資金は50Gだった。それをすべてはたいて洋服を一着仕立てた。両者は密かに接触し互いの商品を吟味しあった。小泉君はブッシュ君の洋服に120Gの価値をみた。皇国市場で確実に120Gで捌ける。一方、ブッシュ君は小泉君の和服に150Gの価値をみた。帝国市場で確実に150Gで捌ける。両者の意思は合致し、その値で取引することに決めた。小泉君はブッシュ君に120G支払う義務を負い、ブッシュ君は小泉君に150G支払う義務を負った。両者の債務は相殺され、ブッシュ君が小泉君に30G支払う義務が残った。

でもちょっと待った!ブッシュ君は洋服の製作に手持ち資金をすべてはたいてしまっている。30Gなんて支払えない。その旨を小泉君に伝えた。取引は不成立か?

小泉君は考えた。もしこの取引が成立すれば、小泉君の儲けは50Gの価値がある。いまGで決済できないからといって、ブッシュ君との関係を解消するのはもったいない。今回のような取引をこれからも繰り返し行えば、小泉君は確実に儲かるし、それはブッシュ君も同じだ。いまブッシュ君は支払いができないかもしれないが、未来は明るい。この密貿易で利益を上げ続ければ支払う体力がつくのは確実だ。人生色々!貿易も色々!支払も色々だ!いいじゃないか!

小泉君はブッシュ君に、今回の30Gはツケでいいから、これからも取引しようと持ちかけた。ブッシュ君に異論はなくめでたく取引が成立した。


この架空話での決算
・小泉君の儲け 50G(150−100)
・ブッシュ君の儲け 70G(120−50)
・日本皇国の貿易収支 30Gの黒字(150−120)
・アメリカ帝国の貿易収支 30Gの赤字(120−150)


貿易収支の黒字も赤字も貿易による儲けとは全く関係がないのが分かるかと思う。アメリカ帝国にとっての貿易赤字である30Gはブッシュ君にとっては債務だが、アメリカ帝国にとっては債務でも何でもない。30Gの価値がアメリカ帝国経済に(ブッシュ君の未来の可能性への)投資として流れ込んでいるだけだ。一方、日本皇国にとっての貿易黒字は小泉君にとっては債権だが、日本皇国にとっては債権でも何でもない。密貿易で小泉君が得るはずだった30Gは本来は日本皇国内で消費または投資され、日本皇国経済を潤す30Gだったはずだ。しかし小泉君がツケにしたためにアメリカ帝国経済を潤す30Gになってしまった。貿易黒字を出すことは必ずしも良いことではないのである。


架空話で両国の通貨を共通にしたことと関係して…

貿易黒字をはじき出すことが是とされるには特殊状況が必要だ。それは両国の通貨が違うこと。かつ両通貨の取引相場が自由な変動相場ではなく政治的に固定されていて介入が必要なこと。そして相手国の経済圏が強力で、その通貨が基軸通貨となっているため自国通貨では国際取引できないこと、などだ。この場合は決済手段として相手国の通貨を稼がなければならないから貿易黒字は是だ。貿易赤字になるとやばい。

現実の日本の通貨「円」は基本として自由な変動相場で世界の大部分の通貨と取引できる。かつ通貨「円」は金貨や銀貨といった物質の希少性に価値の根拠をおく貨幣ではなく紙幣だ。特殊な債権証書だ。「円」は市場取引の多寡に応じて金融機関を通じて自由に創造される。取引需要が活発化すれば中央銀行が刷るまでもなく勝手に自由市場で増えるワカメのごとく増える。そして、それは「ドル」も「ユーロ」も同じだ。外貨獲得云々で頭を悩ます必要は全くない。だから、貿易収支を考える上では、通貨を共通のゴールドと設定して単純化した架空話から考えたほうがよりその本質が分かる。


追記

よく、なぜアメリカにはグーグルのようなベンチャー企業がよく育ち、日本では育たないのかという嘆きの声を聞く。だがアメリカは長年にわたり貿易赤字国である。それは諸外国が儲けた付加価値の一部がずっとアメリカに投資され続けてきたことを意味している。一方、日本はずっと貿易黒字国だった。それは日本国内での儲けの一部をせっせとアメリカに投資し続けてきたことを意味している。日本はその儲け(付加価値)を日本の若者に投資せず(与えることをせず)、アメリカの若者にせっせと貢いできたのだ。そんなことをしながら日本の貿易黒字を眺めて、アメリカを双子の赤字と揶揄し、勝手に勝った勝ったとホクホク顔をしてきた。日本にベンチャー企業が育たないのは当然である。

グーグルは日本の対米貿易黒字が育てたといえるかも。どの面下げて嘆けばよいのやら。(笑)
posted by あれるげん at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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